2014年10月18日

「品質」をプロセスの中で折りこめ!

僕は大学を卒業したあと、実家(新潟県)の近くにあったOTCメーカーの工場に勤めた。

いわゆる、GMPの世界に入ったわけだ。


実際にやっていた主な仕事は薬の原料、中間製品、最終製品の品質管理(主に定量分析などの分析)だ。


そのGMPの世界で徹底的に叩き込まれたのは「品質は工程内で織り込む」ということだ。

つまり、原料の秤量、混合、打錠などの工程が終わり、打錠された薬(中間製品)を分析したら、その瞬間に「品質」が生まれるわけではない。

原料の秤量を二人の目でダブルチェックする、混合もSOPに従って機械操作する、打錠も同様にSOPやマニュアルに従って機械を設定し、操作する、それを記録に残す、これらの1つ1つの工程ステップの中で品質は織り込まれるのだ。

いいがけんに秤量し、適当に混合し、気の向くままに打錠していたら、一定の品質を持った医薬品ができるわけがない。

プロセスの中で品質が少しずつ生まれる。



これを治験にあてはめてみよう。

まず、治験実施計画書がある。

治験実施計画書の作成もSOPに従って作成される。

そして、この治験実施計画書に従って治験をやらないと、まず、品質が保たれない。

CRCの方が被験者の問診を行い、それを「所定」の書類に「正確」に記載する。

治験責任医師等が「適切」な原資料から必要なデータを「正確」に症例報告書に記載する。(最近なら、入力する、かな。)

モニターがSDVを行う。

このモニターがSDVを行った瞬間に品質が生まれるわけではない。

それまでの様々なプロセスの中で各自が規定のSOP、マニュアル、治験実施計画書に従って治験の仕事を行うことで、その過程の中で品質が織り込まれている。

さらに、最後に「監査担当者」が監査することで初めて「品質保証」ができるわけではない。

監査担当者が監査をするまでに行われた治験のプロセスの中で品質が生まれる。

それらのプロセスに関わったを各自が品質保証するのだ(各担当者が治験実施計画書を守る、正確に記録する、プロセスを守る、マニュアルどおりに作業する、記録するなど等)。

監査は、ただ、その結果を見るだけなのだ(もちろん、監査の仕事も品質保証の一環だ)。


モニターはモニタリング報告書を書いたら、まず、自分でそのモニタリング報告書をチェックする。

正しく事実が記載されているか、モレが無いか、誤字脱字はないか、など等をモニター自身がする。

これがQCの基本だ。

QC担当者がモニタリング報告書をチェックした時に品質が生まれるわけではない。

モニターがモニタリング報告書を書いている間に、そして、一息入れてもう一度、今、書いたモニタリング報告書を自分の目で確認する。

そこに「品質」が生まれる。


治験に係わる全ての人が品質に責任を持つのだ。(僕も含めて。)

QCがチェックするから、とか、監査がチェックするから、と、各自が自分の仕事を確実に全うしていなかったら、品質はボロボロだ。


治験の品質責任者は「あなた」なのだ。

まぁ、これは治験以外の普通の仕事の基本でもあるんだけどさ。


posted by ホーライ at 13:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の質 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月17日

治験の逸脱事例集・プロトコル逸脱・GCP違反例について(その1)

今週と来週は下記の総合機構の資料を使って、治験の逸脱事例集・プロトコル逸脱・GCP違反例について学んでいきます。

これらの資料は昨年(2011年)に総合機構が実施した「GCP研修会」の資料です。

(参考資料)平成23年度GCP研修会資料

新医薬品の適合性書面調査及びGCP実地調査について

治験を実施する医療機関における留意点



GCPには二本柱がある。

次の二本だ。

◆1本目の柱・・・被験者の人権の保護、安全の保持、福祉の向上

◆2本目の柱・・・治験の科学的な質、成績の信頼性

このことはGCP省令の第1条に記載されている。

だから、モニターもこの2本の柱をがっしりと作るために日頃、モニタリングをやっているわけです。

監査担当者もこれらを守られているかを保証するために書類をチェックしています。

総合機構の担当者も上の2本が守られているかを確認するために調査を実施するのであって、決して「あら捜し」をするために調査をやっているわけではありません。




●治験依頼者の責務とはしては以下のことがあげられます。


◆ 手順書の作成及び当該手順書に基づく品質保証の実施

◆ 治験実施計画書、治験薬概要書の作成

◆ 実施医療機関および治験責任医師の選定

◆ 安全性情報の評価・報告

◆ 適切なモニタリングの実施

◆ 治験薬の管理

◆ 記録の保存

◆ 被験者の健康被害の補償

◆ 総括報告書の作成

◆ 監査の実施



●●● 信頼性調査対象試験、医療機関、症例の選定について ●●●

総合機構は以下の観点で「信頼性調査」の施設・症例を選定しています。


◆調査対象試験の選定(書面・実地)

  *承認申請資料の中の重要な試験を抽出



◆調査対象医療機関の選定(実地)

  *新有効成分含有医薬品:4施設程度(優先・迅速審査品目を除く)

  *上記以外の医薬品:2施設程度

  *実施症例数、過去のGCP調査の実績等を考慮


◆調査対象症例の選定

  *(書面)試験の重要度に応じて抽出率を決定(抽出率:〜20% / 1 医療機関)

  *(実地)調査対象医療機関における調査対象試験の全症例





●●● 新医薬品の適合性書面調査の照会事項内訳(H21-22年度) ●●●


◆不整合等・・・14件(20%)

◆逸脱症例等に対する対応・・・12件(18%)

◆電子データの取り扱い・・・12件(18%)

◆データマネジメント、統計解析・・・6件(9%)

◆症例報告書の署名・・・5件(7%)

◆その他・・・19件(28%)




●●● 新医薬品の適合性書面調査における照会事項の事例 ●●● 

ここからが重要です!

◆不整合等

  ▼症例報告書と総括報告書の症例一覧との不整合が生じた経緯

  ▼総括報告書と統計解析報告書の記載内容に不整合が生じた経緯と承認申請資料の信頼性に及ぼす影響

  ▼総括報告書の記載内容について、総括報告書の別の項との不整合が生じた経緯



◆逸脱症例等に対する対応・・・中止基準に合致したにもかかわらず、治験が継続された症例についての治験依頼者の対応


◆DM、統計解析・・・有効性の解析対象集団における症例取り扱いの妥当性と解析結果への影響

◆電子データの取り扱い・・・実施医療機関以外の者による電子症例報告書への入力の妥当性

◆症例報告書の署名・・・治験責任医師の署名時期の妥当性

◆その他・・・規定された手順に従って実施されていない緊急用治験薬割付コード開封の経緯


とにかく不整合を無くそう!!

CRFとカルテ等の原資料との間の不整合はもちろんのこと、CRFと総括報告書のデータの不整合も注意しよう。

あと総括報告書の「図表」や「一覧表」と本文の数値の不整合などもよく見かける。

「治験の総括報告書」のサマリーと「統計解析報告書」に記載されている解析結果との間の不一致も時々見かける。

これは、細心の注意力と集中力をたよりにチェックをやるしかない。



●●● 治験依頼者への改善すべき事項の内訳(H22年度) ●●● 


◆モニタリング関連・・・36件(54%)

◆副作用情報の伝達関連・・・24件(36%)

◆その他・・・7件(10%)


ここで注意するのは副作用情報の伝達関連:「重篤な副作用」を速やかに全ての医療機関の長と治験責任医師に連絡することだ。

通常、1ヶ月以内に行うことを目安にしよう。


上記の◆モニタリング関連をさらに細かく内訳を紹介すると・・・・

◆原資料と症例報告書の不整合・・・16件(45%)

◆IRB審査不備等・・・7件(19%)

◆治験実施計画書からの逸脱・・・5件(14%)

◆同意取得に関する不備・・・5件(14%)

◆その他・・・3件(8%)


ここで注意するのは(あとで出てくるけれど)、「IRB審査不備等」だ。

よくありがちなのが、迅速審査を勘違いしていること。

「重篤な副作用」などを迅速審査で済ませていることがある。

通常、迅速審査は「事務的な軽微な変更」を審査する方法であって、安全性情報等の重要な情報についてはしっかりと(迅速審査ではなく)審査してもらうようIRB事務局に伝えること!




●●● 治験依頼者への改善すべき事項の事例 ●●● 

◆治験実施計画書の不十分な記載に起因する逸脱の発生(GCP第7条第1項)


◆モニタリング関連(GCP第21条、第22条)

  *原資料と症例報告書との不整合、治験実施計画書からの逸脱、IRB審査不備、同意取得に関する不備等について・・・

    ・把握していない
    ・把握していたが、了承をしている
    ・モニタリング報告書等に適切な記録を残していない


◆未知重篤な副作用情報の実施医療機関への伝達遅延(GCP第20条第3項)


ここでの留意点は「プロトコルの選択基準・除外基準」が不明確ということがある。

あいまいな表現で「重篤な高血圧」のように何だか分からない表現はやめよう。


以上の指摘は僕が監査をやっていた10年以上前とほとんど変わっていない。

ということは、何ら改善されていないとも言えるし、間違えるところは今も昔も変わらないということ。

逆に、そこに注力することで、指摘を減らすことができる。


(来週に続く)










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posted by ホーライ at 19:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の質 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする