2013年03月15日

医師の治験への取り組みに対する現状調査

以前、「GCPメルマガ」でも紹介しましたが製薬協の「医薬政策研究所」の「政策研ニュース」の最新号が面白いですよ。

特に「医師の治験への取り組みに対する現状調査 −日本、韓国、米国の治験担当医師へのアンケート結果より−」が興味深い!!
    ↓
http://www.jpma.or.jp/opir/news/news-38.pdf

詳細はレポートをお読み頂ければいいのですが、僕の読了後の最初の感想は「まだ、そうなんだ!」というもの。

それは何かと言うと「治験を受託している理由」で、日本の医師の場合、「病院/医局や上司/教授からの指示や命令である」という回答が多いこと。

(アメリカではほとんどない。)

僕が現役のモニターをやっていた15年ほど前、確かに教授や部長からの「指示」、あるいは「学閥」の教授の紹介での地方の病院への医師など「紹介」で治験責任医師や治験分担医師を選定していた。

そして、その医師に会うと「しょうがないな。部長が(教授が)言うからやるけれどさ」という言葉を聞くことは少なくなかった。

(被験者の登録数が少ない時は、その部長(教授)から、若手の治験分担医師にプレッシャーをかけてもらう、というのも「とても」有効な手段だった。^^;)

それが今でも、まだ、続いているんだな、というのが一番、びっくりした!!


それは、さておき医師が治験を受ける理由として最も多いのが「最先端の治験や治療に関する情報が入手できる」で、次に「医療に貢献できる」だ。

これは納得できる。

僕が関わった抗がん剤は臨床試験に入る前から評判が良かったので、快く治験を受けてくださる医師が多かったし、同じ社内で実施していた難病のALSの治験なども医師から積極的に治験を受託してくださることが多かった。

逆に言うと「国内で10番目のH2ブロッカーですけど」というような場合は・・・・・・・だ。(H2ブロッカーというのは、あくまでも例としてね。)

患者も、抗がん剤や難病、オーファンドラッグの場合は、治験に参加してくださる患者さんは多かったし、登録スピードも速かった。(そりゃそうだよね。でも、治験だから治験実施計画書で選択基準、除外基準が厳しくて、全ての患者に使えるわけではない、というのがモニターとして心が痛んだ。)



さて、レポートに戻ります。

「より積極的に治験を実施するために」何が必要か? という質問とそれに対する政策研の考察が興味深いし、よい考察をしている。

まず、日本の医師の場合、日本は「時間的な余裕がある」「スタッフの協力が得られる」のポイントが高く、医師は時間的な余裕も含め、医師をサポートしてくれる体制が必要と考えている。

それに呼応して「治験業務に費やせる時間」もアンケートできいている。

すると、日本の場合、100人中80人が、1週間のうち治験に費やすことのできる時間が5時間未満と回答した。

5時間未満と回答したのは韓国が52人、米国が40人であることから、2つの国に比べて日本の治験担当医師は治験のために割ける時間が少ないことがわかる。

まぁ、このあたり、予想どおりだよね。

でもって、これに対する政策研の考察が素晴らしい!


■■■ 以下、引用 ■■■

日本の医師は忙しいからCRC などの治験スタッフのサポートの割合を大きくするということも大切ではあるが、これでは根本的な問題解決にはならない。

■■■ 引用終わり ■■■


この引用のあとに病院全体で治験に取り組むことが重要となるのだが、それよりも、僕が気に入っているのは「忙しい」→「CRCを採用」→「治験が進むとは限らない」という点を言っていることだ。

もともと「部長の指示で」やっている治験ですからね。

自分のことを考えると分かるのだが、「忙しい」→「誰かのヘルプができたお蔭で時間が空いた」→「やりたいことをやる」となるよね?

それが「治験」とは限らない。


医師が忙しいからと言って、CRCを採用しても、その医師の時間が空いた分を治験にあててくださればいいが、きっと、「自分がやりたいこと」に時間を割くのが自然の流れだ。

でも、だからと言って、CRCの採用が治験の促進に繋がらないとは思わないけれどね。

それに治験のデータの質向上を考えるとCRCは不可欠ですし。


さらに、レポートでは「医師がGCPトレーニングにアクセスしやすさを増やすべきだ」と強調している。

韓国や米国では、このあたりが進んでいるらしい。

日本でも、確かに、このあたりが進んでくれると、治験そのものの理解にも繋がるし、何よりもGCP違反や治験実施計画書逸脱が減って、助かる。

結果的に治験促進に繋がるよね。


学会、業界、国家が強力しあって(しあわなくもいいけれど)、医師の治験への理解を深めてくださる工夫が必要ですね。

たとえば「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」にもっと医師が参加するような仕組みが、今後の課題だと思います。

是非、もっと「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」に医師が参加してくださるといいなぁ。(しみじみと・・・・・。)


あ、あとね、日本も韓国も米国も医師は治験に参加する意義として「将来的な自分のスキルアップにつながる」が高い。

モニターは、このあたりを攻めると治験促進に繋がると思うので、是非、戦略を練ってください。


それと、この「政策研ニュース」は時代の流れをよくつかんでいるし、さらに時代の先取りもしていることが多いので「自分のスキルアップ」に繋げたいモニター、CRCの皆さんは、是非、お読みください。

勉強になりますよ。ホントに。






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