2012年02月03日

治験業界は確実に変わりつつある。

これ、もう読みました?
   ↓
■「次期臨床研究・治験活性化計画(仮称)(素案)」
  

この「次期臨床研究・治験活性化計画(仮称)(素案)」の中身は大雑把にいって次の5つの柱がある。

@ 治験・臨床研究を実施する医療機関(治験中核病院、拠点医療機関等)の整備

A 治験・臨床研究を実施する人材の育成と確保

B 国民への普及啓発と治験・臨床研究への参加の促進

C 治験の効率的実施及び企業負担の軽減

D その他の課題(GCP 省令の見直し等)



また、現5カ年計画の実施により期待される治験・臨床研究の姿として、以下が提示された。

@ 治験・臨床研究のコスト、スピード、質が米国等諸外国並に改善されている。

A 国際共同治験の実施数がアジア周辺国と同等以上の水準まで向上している。

B 質の高い最先端の医療の提供を確保し、国民が安心して治験・臨床研究に参加することができる体制が確保されている。



中間見直し報告では、現5カ年計画の重点的取組事項(アクションプラン)に関する進捗状況の評価を行い、今後より一層強化すべき課題として以下の事項を挙げている。


@ 症例集積性の向上

A 治験・臨床研究の効率化

B 研究者の育成

C 治験・臨床研究の実施に必要な人材の確保

D 治験・臨床研究の情報公開

E 治験にかかるコスト・スピード・質の適正化


そして、上記の目標を達成するためには「治験等の効率化に関する報告書」(平成23年6月30日 医政研発0630第1号)での提言を徹底的に行うこと、なのだ。

では、その「治験等の効率化に関する報告書」(平成23年6月30日 医政研発0630第1号)とは何か?

これです。去年の6月に通知されたものですが、もう読みましたか?
   ↓
治験等の効率化に関する報告書



この「治験等の効率化に関する報告書」(平成23年6月30日 医政研発0630第1号)では何が提言されているのか、と言うと、次のようになる。

@ 治験コストの適正化について

A 共同治験審査委員会等について

B 症例集積性向上の必要性及びその対応策について

C 治験プロセスにおける効率化について



これら「「次期臨床研究・治験活性化計画(仮称)(素案)」と「治験等の効率化に関する報告書」はとてもいいことを提言されている。

たとえば、「効率化に関する報告書」の中には、こんな提言がある。



■4-2.GCP の要求に沿った必要最小限の手順等の取りまとめ(原本の22ページ:PDFファイルの29ページ)

GCP省令の要求に沿った必要最小限の手順で治験業務を行うことは、自ずと治験依頼者及び実施医療機関の業務の効率化と負担の軽減、さらに治験コストの低減への効果をもたらすと考える。

これらを踏まえ、我が国における治験実施の現状と課題を把握したうえで、治験依頼者と実施医療機関が協働し、国際的な競争力を維持・強化するために、治験プロセスにおける効率化に向けた提言を以下に記す。



■4-3-2 .実施医療機関における治験実施体制の整備と役割分担の適正化(原本の24ページ:PDFファイルの31ページ)

モニターが実施医療機関内の関連部署の各担当者に対し、個別に訪問して情報収集・提供を行うことは、役割分担及び業務効率の観点から適正とは考えにくい。

特に「新たな治験活性化5 カ年計画」に基づき治験業務を迅速かつ円滑に実施する役割が求められている治験中核病院及び拠点医療機関の中においても、他の医療機関と比較してモニターの訪問回数が多いなど治験依頼者の負担が大きいとの調査報告がある。

また、実施医療機関の長及び治験責任医師が作成すべき文書の作成や治験依頼者から提供を受けた資材のカスタマイズ(当該医療機関用に改変)を今なおモニターに要請している実施医療機関がある

これらの問題解決のためには、実施医療機関における治験実施体制の整備と治験依頼者と実施医療機関の役割分担の適正化が不可欠である。



G 実施医療機関の長及び治験責任医師が作成すべき文書は実施医療機関側の責務として作成されるものであり、モニターにそれらの作業を要請すべきでない。


H 実施医療機関が治験依頼者から症例ファイルやワークシート、併用禁止薬一覧、治験薬管理表、治験薬使用説明書及び外注検査キットなどの各種治験資材の提供を受ける場合は、治験依頼者が治験実施に際し事前に準備した標準版のみとし、実施医療機関がそれらのカスタマイズを必要と判断した場合は、医療機関側で行う。


この最後に書いたGとH は「病院が要求するのであれば、それをモニターに押し付けるのではなく、病院側で行うこと」という事で、涙が出るほどうれしいし、是非、そういう役割分担が徹底されることを期待したい。



僕もモニターをやっていたころ、施設の治験事務局の人から「治験概要書をA31枚にまとめてください。それを26穴のパンチで穴をあけ、コクヨの黄色ファイル(型番●●)に入れて、11冊、出してください」なんて言われたことがある。

そこでで、26穴をあけるパンチを探したのだが、どこにも売っていない。

文房具で有名な銀座の「伊東屋」に行ってもないし、ネットで検索しても無かった。

28穴用のパンチならそこらじゅうに有ったのだが、26穴だけは無かった。

しょうがないので、そういう結果だったことを治験事務局に行ったら、「いえ28穴であけてくださいと言ったはずです」とのこと。

こんなことを言われた日には泣きそうになったよ。


ところで、今でも色んなことを言ってくる治験事務局は多くて、我が社ではIRB資料用にグループ員総出で、なおかつ派遣の人を雇って、ファイルを作っている。




さて、さらに日本医師会の治験促進センターの方々が次のような提言を行っている。
    ↓
治験プロセス検討にあたって
    


この「治験プロセス検討にあたって」にはこんなことが書かれている。


【現状】

実施医療機関・治験依頼者双方が、GCPで要求されている以上の業務を、‘必須業務’ と考えて実施している(やらせている?)


【課題】

@GCPで要求されている必要最小限の手順とは?

A治験を効率的に実施するためのプロセスとは?


各々の業務から、GCPに根拠がある業務のみ抽出された(「GCPを片手に、構成員が合宿状態で頑張りました!!」とのこと。お疲れ様でした。)


●治験依頼者と実施医療機関が協働し、国際的な競争力を維持・強化するためには・・・
     ↓
GCPで要求されている必要最小限の手順を明確にした上で、更なる効率化に向けた改善策の検討が必要!


●現状と課題 ⇒ 医療機関ごとにIRB審査資料の提出方法がある。説明文書などの作成をモニターに要請する施設がある。

●対策 ⇒ IRB審査資料の種類や並び順を統一する。IRB審査資料はそれぞれの役割に従って作成する。



●現状と課題 ⇒ 医療機関側で作成すべき文書の作成や、症例ファイルなどのカスタマイズを担当モニターに要請している施設がある。

●提言 ⇒ 医療機関は必要な人員を確保し、役割分担の適正化に努める。治験依頼者からの提供資材のカスタマイズは施設側で行う。



ということで、これからはモニターが治験責任医師や治験事務局の作業を肩代わりするのではなく、それぞれの責任で資料作成を行うよう言ってくれている。

う、う、う、泣けてくる。

これまで、どれだけ、この手の「肩代わり」で泣かされたことか・・・・・・。



さて、こういう検討会の提言を読んで、あなたはどう思っただろうか?

「うれしい!これでやっとSDVに専念できる」だろうか。

それとも「フン!どうせ、こんなの絵に描いた餅だよ」だろうか。


ここで昔話になるのだけれど(やだね。おじさんはすぐに昔話をする)、僕はフランス系の製薬会社Rで働いていたことがある。

そんな時にICHのE5が出た。


これは言うまでも無く「外国で実施された医薬品の臨床試験データの取扱いについて」で、海外で実施した治験のデータをある条件を満たせば、日本での新薬承認申請用に使える、というガイドラインだ。

このガイドラインが出たときに、僕は研修を担当していたので、臨床部の人たちを集めて、このガイドラインの解説をした。

その解説が終わったときに、ある部長が立って、こう言った。

「こんなガイドラインは理想像であって、絵に描いた餅だ。アメリカの治験なんて人種のるつぼの中でやっているので、日本の申請にそんなデータなんて使えない」。

僕は唖然とした。

R社はフランスとアメリカに拠点を置いていたので、そこでやった治験のデータを日本でも利用して、少しでも新薬を世に出すように活用しようと言ったのに。

せっかく外資系にいるのだから、この手のガイドランを活用しない手はない、と思っていた。

それなのに、その部長は「どうせ、お上が作ったガイドランだからそんなの使えっこない」と発言した。

しかし、別のドイツ系の製薬会社H社は、ガイドラインが通知された半年後にそのガイドラインを活用して、アレルギー薬の申請を行い、承認された。

これ、どう思う?

まぁ、どんなガイドラインでも、それが出て、それを読み、どう感じるかは、人それぞれだからいいのだけれど、僕としては「使える者(物)は何でも使え」と思っている。

せっかくのツールをみすみす放棄して、新薬承認申請を遅らせる手はない。


「次期臨床研究・治験活性化計画(仮称)(素案)」が正式に出ても、どうせ上の人の戯言よ、何も変わらないさ、と思わないようにしよう。

そんなのが出ても、治験環境は変わらないよ、と思うのではなく、治験の世界を自分たちで変えていこう、と考える。



世の中を変えるのはお上ではなく、自分たちなのだ。

治験環境が変わらないのなら、自分たちが変わればいい。

EDC、リモートSDV、サンプリングによりSDV。

まずは、あなたが実行しよう。

そうすれば、世界が変わってくれる。


もう一度、お願いします。

下記の資料をよくお読みください。

そして、社内で、「どうする?」って考えてください。


●「次期臨床研究・治験活性化計画(仮称)(素案)



●「治験等の効率化に関する報告書」(平成23年6月30日 医政研発0630第1号)
 


●「治験プロセス検討にあたって
   

世界を変えるのは、ほかならぬ、あなたです。

あなたが変われば、世界が変わります。





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posted by ホーライ at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の活性化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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