新しい職場、新しい世界に入って3カ月が経ちました。
モニターになる方もCRCになる方も、GCPにはうんざりしたことと思います。
確かに読みにくいし、難しい言葉を使っているし、まとまりがあるようで無いですからね。
でも、そのGCPを守ることで、初めて、創薬ボランティアの人権や安全、福祉が守られるわけです。
なので、この際、GCPを丸暗記してしまいましょう。
全てを把握することで、初めて、細かいところが理解できる、ということもあります。
「私の仕事はモニター(CRC)なのですが、それでもIRBの責務とか覚えないといかないのでしょうか?」と聞かれたら、「はい。覚えてください。」と答えます。
何故なら、IRB抜きで治験は進まないからです。
自分の仕事のうち、どの部分をIRBで審議してもらわないといけないか、を知っていないと、まずいですよね?
たとえば、同意説明文書を改訂する場合、IRBで審議が必要です。ね?
IRBが承認していない説明文書で同意をもらっても、それは認められません。
何故ですか?
それは、不適切、不当な同意説明文書は、創薬ボランティアの人権や安全を侵しかねないからですね。
「この治験薬は絶対に安全で、副作用が全くありません。」と嘘を説明文書に書いていないか、第3者が確認しないといけません。
・・・・・・と言うように、GCPはあなたの行動が創薬ボランティアを危険に陥れないかを守ってくれるものなのです。
そういう観点で、是非、GCPを丸暗記しましょう。
ただ、暗記する際に、何故、この条文があるのか?という視点を忘れないようにしましょう。
なぜ、治験薬は契約締結後でないと病院に持っていってはいけないのか? とかですね。
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GCP省令第11条:
治験の依頼をしようとする者は、治験の契約が締結される前に、実施医療機関に対して治験薬を交付してはならない。
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GCPがあなたの血となり肉となることで、創薬ボランティアを様々な危険から守ることができます。
創薬ボランティアは医師を信頼し、医師はあなたを信頼しています。
つまり、創薬ボランティアは間接的に、あなたを信頼しているわけです。
その信頼を裏切らないためにも、治験のプロになりましょう。
プロならプロで、自分が働く世界のルールを熟知していないと、本当のプロとは言えません。
新しい世界に馴染むためにも、その世界の法則を知っておきましょう。
それは、あなた自身を守ることにもなります。
何故か?
GCPをあなたが覚え、それを実行することで、あなたを「非人道的な」治験から遠ざけてくれます。
GCPを順守することで、あなたが「創薬ボランティアを危険な目に会わせる」治験から守ってくれます。
だから、GCPを丸暗記しましょうね。
(ふろく)これ(↓)は6月24日(金曜日)に行われた「モニター合同研修」で、実際に新人モニターから僕に質問されたことです。
▼Q)モニターをやっていて、どんな時が大変でしたか?
A)卵巣がんに対する抗がん剤の治験をやっていたとき、効果が出そうもない患者さんの治験への参加を見送るように治験責任医師に伝えなければならなかった時が、一番、辛かった。
その卵巣がんの患者さんは標準的な治療を行っていたけれど、再発してしまった。
だから、その患者さんにとっては、もう、治験に参加する位しか治療の可能性が無かった。
でも、その患者さんは僕が担当していた抗がん剤では効果が得られないと思われた。
そこで、「会社」としては、治験に参加することを見送るように治験責任医師を説得するよう上司から指示が出た。
僕は葛藤した。
治験責任医師に「今回の患者さんは治験に参加を見送るようにお願いします」と伝えたら、「おまえは自分の会社のことしか考えていないのか!」と恫喝された。
この患者さんにとっては残された少ない選択肢として抗がん剤の治験に参加する、ことぐらいしかなかった。
その時、同行した先輩(と言っても年齢は僕の下だった)モニターが「先生、もしこの患者さんが当社の治験薬を投与されても、効果が期待できない確率のほうが高くなります。そうなると、患者さんは副作用だけが出て、苦しむだけになります。この点も考慮してください。」と治験責任医師を説得してくれた。
結局、その患者さんは「温熱療法」に入ることにして、抗がん剤の治験には参加しないことになった。
先輩モニターは僕にこう言った。
「ひとりの効果が期待できそうもないがん患者さんに使ってもらうよりも、1日も早く製造承認を貰い、より多くの卵巣がん患者さんに使ってもらうことのほうがいいのではないだろうか」
僕はしばらくは良心との葛藤に苦しんだ。
これが、モニターをやっていて、一番、大変だったことだ。
▼Q)モニターをやっていて、良かったことはどんなことですか?
A)自分が開発に参加していた治験薬が世の中に出たこと。
よく考えてみて。
みんなの仕事は世界中の何百万人の患者さんの苦しみを救うことができるんだよ。
モニターの仕事の醍醐味は、そこにあると思わない?
▼Q)新人モニターが陥りやすい問題な何ですか?
A)自分に与えられた仕事だけを考えて、治験責任医師や治験分担医師のことを考えずに、ただ、自分の仕事をすることだけに陥ること。
新人は与えられた仕事をこなすことで、イッパイイッパイだ。
すると治験責任医師や治験分担医師の都合まで考えが及ばないことが多い。
気配りができる、相手の都合も考えられるモニターに早くなってね。
▼Q)モニターにとって大切なことって何ですか?
A)「誠意」と「情熱」の2つ。
治験の仕事もしょせん、最後に行き着くところは「人間(治験責任医師等)対人間(モニター等のの仕事」だ。
だから、「誠意」を持って仕事をすることが最低条件。
これはモニターの仕事に限らないけれどね。
あとは「情熱」。
この治験薬を世の中に出したいんだ、という「情熱」がないと、何も達成できない。
これまたモニターの仕事に限らないことだ。
治験は同じ医師に集中することが多い。
ひとりの医師が3社の「高血圧」の治験を担当する、なんてこともざらだ。
そこへ治験に参加してくれそうな患者さんがいたとする。
その時に医師が思い浮かべるモニターの顔は誰だろう?ということを考えて。
まず、まっさきに自分の顔を思い浮かべてもらえるようになるといい。
そのためには治験責任医師等と信頼関係を構築することが何よりも大事だ。
▼Q)どんな時に転職を決意するのですか?
A)色々。
その会社に飽きた、とか、外資系はもういいや、とか、その会社の社風に合わないなと思った時とか、ヘッドハンティングされたり、とか。
みんなも3年ぐらい経験を積んだ、転職を考えてみたら?
転職を勧めるわけではないけれど、転職しようとすると、自分の市場価値が分かるよ。
他の会社に売り込めるほどの価値を自分は持っているか、等と考えることが大事。
「井の中の蛙」にならないようにね。
▼Q)日本の治験環境は欧米と比べて遅れていますか?
うん。たとえばアメリカと比べたら30年は遅れていると思う。
Q)たとえば?
A)治験の契約を治験責任医師と直接、結ぶことができない。
だから、治験責任医師は治験に対して責任が希薄になりがち。
アメリカなどでは「契約社会」だから、登録数が契約に追いついていないと、「契約をきちんと守ってくださ!」とモニターが治験責任医師と「対等」に話せる。
Q)これから日本の治験環境は良くなると思いますか?
それは、きみたち次第。
みんなが、日本の治験環境を変えていってね。
・・・・・・ということで、お疲れ様でした。
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