しかし「想定できる範囲の外」のことは、常に「想定していない」ところから始まる。
私が過去に経験した「想定外」のこととして、次のことがある。
●「ダブルブラインド」と「オープンな長期試験」を同一病院で実施していたときに、間違えて治験薬が投与された。
つまり・・・・
「長期投与試験」に入っている患者さんに「ダブルブラインド」の治験薬が投与されてしまった。
ぎゃくに「ダブルブラインド」の治験薬が「長期投与試験」の患者さんに投与されてしまった。
あなたなら、どうしますか?
この2つの事例で、どちらの患者さんは「有効性データ」から削除し、どちらの患者さんは「有効性データ」も「安全性データ」も削除すべきか、考えてみましょう。
●さらに、治験薬の「内容量」が変わったのに、それが全ての治験実施医療機関に伝わっていなかった、というのもある。
あるロットから、内容量が50mlから55mlになった(濃度は一緒)。
患者の体重から投与量を決める治験だったのだが、この場合、どのような処置、対応、データの取り扱いをしたらいいかを考えてみましょ
う。
●また、ある「臨床試験検査」から、ダブルブラインドのブラインドが保てなくなった、というのもある。
ある検査値をみると、一目瞭然として、「治験薬群」なのか「プラセボ群」なのかが分かってしまう、という事態もあった。
●ほかにも、「治験薬群」と「プラセボ群」が全く、逆に割りつけられた、というのもある。
●分包されている薬の数が「2錠」のはずなのに、ある治験実施医療機関で「3錠が入っている」分包が見つかった。
・・・・・・・等など。
僕の数少ない治験経験の中でもこれだけのことを見聞きしたのだ。
「まさか!」という事態が発生することもあることを肝に銘じておこう。
あわてずさわがず、という分けにはいかない。
そういう事態が発生したら、とにかく「優秀な頭脳」を緊急招集して、対応をもれなく考え出すのだ。
アポロ13号のときのNASAのように。
今回の大震災では、何もかもが、「想定外」のことだった。
絶対安全と言われた原発で放射能漏れが発生した。
指定された避難所が津波に襲われた。
過去の記録をはるかに超える津波が発生した。
僕たちの治験でも起こりうるのだ。そういうことが。
普段からフットワークが軽い優秀な頭脳を育てるしかない。
緊急時対応マニュアルを作成するのもいいかもしれないが、そのマニュアルを超えて事態が発生するのだ。
東京電力や政府の今回の対応をつぶさに観察して、自分たちの組織に反映させよう。
何が事態を悪化させるのか、が観察のポイントだ。
また、何が事態を打開したのか、が観察のポイントだ。
常に「学習する組織」として、世の中のできごとを、そういう目で見ていこう。
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