イレッサの副作用で亡くなられた被害者の方々が国と製薬会社(アストラゼネカ)を相手に「責任」を問う訴訟を起こしていたのは、みなさんご存じのとおり。
今回の裁判では国の責任は問われないが、製薬会社に対しては賠償を命じました。
この問題に関しては、裁判の結果が出る前に「和解勧告」が出されたのですが、国も製薬会社もこれを受け入れませんでした。
この時のことで最近、ニュースになっているのは「医学会」から裁判所の和解勧告に懸念を表明していたのですが、その声明文が厚生労働省から働きかけたり、原稿まで作られていたのではないか、という報道があります。
さらに、声明文の中には「新薬の開発にも影響を与え、ドラッグラグの問題にも関係する」という内容があったと聞いています。
はっきり言って、ドラッグラグと抗がん剤の副作用問題とは全く関係ありません。
最近、いろんなところで、この「ドラッグラグ」という言葉がまるで魔法の杖のように使われています。
(ドラッグラグとは海外で既に使われている標準的な新薬も、日本では2,3年あとになってやっと承認される、という問題。原因は色々なものがある。)
抗がん剤は薬の中でも特殊で、まず100%副作用が出ます。
その中には死亡につながりかねない副作用も少なくありません。
通常の(抗がん剤以外の)薬で重大な副作用が出た場合、「副作用救済処置」がとられます。
↓
http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/ldp.html
ところが、抗がん剤は副作用が必発なので、この救済制度から除外されています。
このことが問題だと政府の中でワーキングチームが作られ、抗がん剤の副作用でも死亡された場合の救済措置がとれないか検討され始めました。
やっとです。
ちょっと遅いかな。
国も製薬会社も抗がん剤の副作用が出ることに対しては責任は無いと思いますが、副作用が強いので十分に注意するよう情報を医師に流したり、がん治療の専門医にだけ使用を許可する、というような措置を取る、というのは国や製薬会社の責任だと思います。
今回の裁判結果が、日本の製薬会社の抗がん剤開発に影響を与えるかと言えば、無いとは言えない。
抗がん剤の副作用を十分に研究し、もし、それが命に係わるようなら、その情報を出し、使用法に制限をかける、などの対応が取られるようになる。
副作用が出る、ということは薬の性質の問題であり、そういう性質を減らすよう製薬会社は当然、研究しています。
ただし、そういう副作用が出るということ、もし万が一にそういう副作用が出た場合、どのような処置を取るべきかを十分に啓発するのが国と製薬会社(主に製薬会社)の責任となるのでしょう。
今回言いたかったことは次のとおりです。
●「ドラッグラグ」という言葉を使えば、何でもOKという風潮は困る。
●抗がん剤の副作用について救済措置が取れるようなってほしい。抗がん剤の副作用まで救済の手を伸ばしたらお金が足りなくなる、ということは十分承知の上で。
●お役所の各種研究班の儀式的集まりやお役所の当初の青写真とおり研究班を動かすのはそろそろやめてほしい。
●各種学会は自分たちで検討した結果をガイドラインや表明文に反映させる。お役所との「できレース」は困るし、情けない。
●副作用の強い薬に関しては製薬会社が国の指導を待たずに、素早く対応して欲しい。
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