古代エジプトの遺跡にも古代中国の医学書にも載っている。
古代中国の医学書には尿の糖を検出する面白い方法が書かれている。
患者は広く平らなレンガに放尿し、アリが来るかどうかを見るというものだ。
今日ではアメリカで1800万人以上が、日本では240万人が糖尿病である。
今では、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが無くなっているか、利用できなくなることが糖尿病の原因であることが分かっている。
しかし、19世紀後半まで膵臓の機能についてはあまりよく知られていなかった。
1869年、23歳の学生ポール・ランゲルハンスは、膵臓には100万個もの小さな島状組織が含まれていることを観察した。(機能はこの時点では不明。)
糖尿病と膵臓の関係の最初の証拠は1889年に得られた。
ストラスブルグ大学のオスカー・ミンコフスキーとジョセフ・F・メーリングが驚くべき発見をした。
イヌの膵臓を外科的に切除してみたら、24時間後にイヌの尿が5%も糖を含み、ひどい糖尿病になっているのを見た。(この時点では、ランゲルハンス島との関係は不明。)
1901年、ジョンズ・ホプキンス大学のユージン・オピーは、死んだばかりの糖尿病患者の膵臓に埋まっている小球状の組織で生産され内分泌されるものとして「インスリン」と命名した。
(インスリンの機能はこの時点では不明。)
糖尿病治療で圧倒的に重要なブレークスルーは、1921年、トロント大学フレデリック・パンティングによるインスリンの発見である。
これは実際、20世紀最大の医学的ブレークスルーとして、ペニシリンやポリオワクチンの発見に並ぶものである。
パンティングは試行錯誤のうえ、イヌの膵臓分泌腺の内分泌に関する部分の活性抽出物を得ることに成功する。
彼はこの抽出物を糖尿病のイヌに注射した。結果は見事、血糖の減少だった。
1921年から22年にかけて、パンティングらは膵臓の内分泌について最初の論文を発表している。
イーライリリーの生化学研究部長ジョージ・クロウズは、パンティングらの研究報告を聞いた。
クロウズは講演のあと、インスリンの生産について協力をパンティングらにほのめかしたが、研究者らは利益追求の単一企業との関係を好まなかった。
だがクロウズは諦めなかった。
彼と社長のイーライ・リリー(創業者の孫)は、トロント大学を訪問し、説得。
大学側はイーライリリー社に1年間、アメリカでインスリンを製造販売する専属ライセンスを与えることに同意する。
人類で最初にインスリンで治療されたのは、トロント総合病院で重症の少年、レオナルド・トンプソンであり、彼の症状はすぐに改善され始めた。
1923年、パンティングはノーベル賞を受賞する。
イーライリリーは初めて商業的にインスリンを提供できる製薬会社になった。
1950年代には、もうひとつのブレークスルーが起き、糖尿病分野の生化学者に2つ目のノーベル賞が与えられることになる。
イギリスのフレデリック・サンガーが1958年、インスリン分子のアミノ酸配列を正確に決定した。
サンガーの発見は、タンパク質の分子構造を決定した最初の例である。
さらに、1979年にはリリーの研究陣が組換えDNA技術により生物学的に活性なヒトインスリンの結晶を発表した。
この結晶は組換え遺伝子で作られたタンパク質の世界最初の結晶である。
世界最初のインスリン製造業者になって60年、イーライリリーはパンティングとサンガーによる大発見以来、最大のブレークスルーを成し遂げる。
1982年にFDAは、『ヒュームリン』と呼ばれる世界初の組換えヒトインスリンを承認した。
この薬はまた、組換えDNA技術によって作られた最初の人間用医薬品である。
・・・・・・と、こんなに華々しく、凄い歴史を持つ、リリー社のインスリン製剤なのだが、まだ、勢いをとめない。
インスリンそのものを改善する方針をリリー社は考えた。
インスリンよりも即効性がある物質を求めたのだ。
全く新しいインスリンだ。
リリー社の研究陣はインスリンのタンパク構造を変換していくことにした。
本当に、『本物』よりもよいインスリンなんて、あるのだろうか?
長くなったので、この続きは来週へ。
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