2010年09月25日

■私たちは、どこまで耐えられるか?

京都大学、山中教授のiPS細胞(http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/index.html)についての番組をNHKで見た。(9月23日、NHK特集)

そこでは、キメラ(異種動物のかけあわせ。例えばマウスとラット等)の可能性や、デザイナーズベイビー(設計されたとおりに造った人間)などの倫理的な問題から、そもそも「生命」とは何か?という問いまで出てきた。

その番組で立花隆(http://chez.tachibanaseminar.org/)は、「基礎研究の段階ではキメラを作ってもいい。」と発言し、司会者のNHKの女性アナウンサーの眉をひそめさせた。

なぜ、そこまで彼は発言したのか?
それは、たとえば、人間の肝臓をブタの体内で作り(これでキメラだ)、その肝臓を取り出し、肝機能不全の患者さんに移植して治療するという、可能性もあるからだ。
そういう可能性を将来的に予想して、すでに研究している科学者もいる。

たとえば、マウスにラットの膵臓を作らせることに東大医科学研究所の中内啓光教授らが成功している。
   ↓
http://sankei.jp.msn.com/science/science/100903/scn1009030102000-n1.htm


●東大の医科研
   ↓
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/


中内教授の実験はそのまま人間とブタとの間でも原理的に可能であることを示している。



また、男性同士のカップルの間に二人の子どもを作ることが可能だ。
一方の男性の皮膚等の細胞から精子を創り、もう片方の男性の細胞から作った卵子を受精させ、誕生させる、というわけだ。
この話を男性同士のカップルに話したら、「それは素敵だ、もし可能なら、絶対に二人の子どもをつくりたい」と感激している場面も放映されていた。

番組の中ではALSの患者さんについての話も有った。
現在、ALS(筋萎縮性側索硬化症)に有効な治療薬はない。
   ↓
筋萎縮性側索硬化症とは?
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/021.htm


ただ、ALSの病気の進行を少しだが遅らせる薬はある。
サノフィ・アベンテイスのリルテックだ。
   ↓
http://di.sanofi-aventis.co.jp/tenpu/rilutek.pdf

(ちなみに、この「リルテック」の開発段階だった治験のデータを僕は監査(QA)した。治験段階では「リルゾール」と社内で呼んでいたが。)


NHKの番組の中では、ALSの患者から取った細胞で作ったiPS細胞から作った神経細胞の画像も出てきた。
その画面の中で、正常な神経細胞はお互いがニューロンをだし、ネットワークを作るのに対して、患者の神経細胞は他の神経細胞から攻撃されて死滅していく画像が明確に映しだされていた。

この研究から二つの応用が考えられる。
ひとつは、正常な神経細胞を作り、それをALS患者に移植する方法(これは困難を極めそうだ)。
もうひとつは、作られた病気の神経細胞を使って治療薬を開発すること(こちらのほうが、まだ可能性はある)。

今後は、このような人間の疾病細胞を使った新薬の開発が進むことだろう。
シャーレの中にあるALSの神経細胞を新薬開発のスクリーニングに使うことが可能だ。

では、たとえば、あなたの肝臓細胞から作った人間というのはどうだろう?
新薬の開発段階の実験だけのためだけの対象とした生まれた1個の人間は受け入れらるだろうか?

ぎゃくに、今の霊長類に対する非臨床試験は問題無いだろうか?
EUでは、動物実験を大幅制限 霊長類の使用は原則禁止にする。
   ↓
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010090801001190.html

猿を使った実験は禁止だが、人間の皮膚細胞から作った「人類」に対する人体実験は認めらるかもしれない。



これからの医療と言うことで、マスコミでも取り上げられる「再生医療」。

(再生医療学会)
   ↓
http://www.jsrm.jp/index.html


その再生医療は期待したいが、クリアしなければならない問題が多い(科学的、技術的な問題だけでなく、倫理的な問題も含めて)。

科学の発達に私たちは、どれくらい耐えられるだろうか?

昔、ジェンナーは牛から作った種痘(牛痘)を人間に使った。
これなども、当時の人たちにとっては、かなり気持ち悪いことだっただろう。

江戸時代に人体を解剖した杉田玄白も偉い。
がんの告知も、体外受精も、脳死も、臓器移植も過去のタブーに挑戦していった。


私たちは新薬を世の中に出していくことを生業としているが、この世界でも、これから度肝を抜くようなことが起こるかもしれない。

私たちの倫理観を180度転換させられることがあるかもしれない。

以前(7〜9年前、脊髄小脳変性症の「わしさん」が、自分の息子に同じ病気が遺伝しているかどうか遺伝子検査を病院にやってもらおうとしたら、その病院の倫理委員会が、「未成年者の遺伝子検査は倫理的に許容できない」と判断し、検査ができなかった。

今なら、どうだろう?


●脊髄小脳変性症
   ↓
http://www.niigata-nh.go.jp/nanbyo/scd/scdindex.htm  


●神経難病患者のための掲示板(この掲示板は新薬開発に関わる人なら、一度でいいので覗いてみるといい。)
   ↓
http://www.niigata-nh.go.jp/nanbyo/kouryuu/kouryuu.htm



私たちの倫理観、人生観、死生観と科学とのバランスはどこまで保っていけるだろうか?

私たちの精神は、科学の発達にどこまで耐えられるのだろうか?

あるいは、ある日、私たちの死生観が科学によって覆される日が来たりするだろうか?

きっと、やってくると僕は思っている。




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